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リスクリテラシー②

リスクリテラシー尺度

以前のコラムで「リスクテラシー」について触れましたが、次にそれでは各個人のリスクリテラシーの修得度をどのように把握すれば良いのか、という課題が生じます。リスクリテラシーを数量的に測定することができれば、各個人や学校や職場などにおいて、あるいは市町村や国の立場においても、各個人や市民のリスクリテラシーを把握することができ、啓発活動や教育、リスクコミュニケーションなどを行う際に、大いに参考となるでしょう。金澤ら(2020)a)は、このリスクリテラシーを測定する試みを行い、リスクリテラシー尺度を作成しました。このリスクリテラシー測定尺度は、6要因(心理学では因子とも呼びます)から成り、各要因に4項目ずつの質問項目が設定されており、合計で24項目の質問から構成されています。6要因とは具体的には、先述の「リスクリテラシー」のコラムでも紹介した、1)「ゼロリスク志向」、2)「リスク対リスクのトレードオフ」、3)「リスク対便益のトレードオフ」、4)「リスク認知のパラドックス」、5)「リスクの基礎知識」、6)「リスク認知のバイアス」のことです。詳細は金澤ら(2020)a)をご覧下さい。

 

ここで、このリスクリテラシー尺度を使用したい方のために、作成者の1人として使い方のアドバイスをしておきたいと思います。この6要因はそれぞれ独立した要因と見なすことができますが、24項目の全てを使用して因子分析すると、必ずしも6因子が上手く独立して抽出されない場合もあり得ます。しかしこの場合にも、金澤ら(2020)a)のモデルに従って、因子ごとに内部の信頼性(クロンバックαなど)を確認しつつ、6因子の枠組みで因子得点を算出したりその後の解析を進めたりすると、混乱が少なく、各因子の意味概念を利用したより有用な知見が得られると思いますので、このやり方がお勧めです。また上述のリスクリテラシー尺度では、初期設定として各因子に4つの尺度が設定してありますため、各因子の妥当性をより高く確保するために、1つの尺度を除外して3尺度で因子を構成して分析を進めることも可能です。

 

今後の課題として、上述の6要因の他に、メディアリテラシーや数量的概念の理解であるニュメラシーの要因も加え、リスクリテラシー尺度の改善を試みる必要があるでしょう。さらにこの尺度によって測定されたリスクリテラシー修得度と、科学技術のリスク認知や不安などとの関連を調べたり、リスク教育の効果を測定したりするなどして、この尺度の有用性を確認することも必要だと考えています。

(田中 豊)

 

a)https://www.jstage.jst.go.jp/article/sraj/29/4/29_243/_pdf/-char/ja