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ワクチン接種で考えるリスク

 COVID-19対策として、日本でも3回目のワクチン接種が進められています。COVID-19ワクチンについては、これまで経験の無い核酸ワクチンや組換えタンパクワクチンが採用され、開発から許認可までの期間が短いこともあって、接種に対する慎重論も多々見受けられました。日本は、子宮頸がんワクチンの副作用を問題としたり、インフルエンザワクチンの効果は無いとして任意接種とするなど、ワクチンに対して慎重になるあまり、諸外国と比較して義務化されているワクチンが少なく、ワクチン後進国と呼ばれることもあります。日本人はそもそも不安感の強い国民性を持っていると言われますが、不安になる一因には、ワクチンを正しく理解できていないことがあるように思います。

 ワクチンは、対象の病原体や毒素に対して、身体側の対応能を獲得するものです。この対応能とは、生体防御機構である免疫です。免疫は機構、すなわちメカニズム、システムなので、良く耳にする「免疫力」というパワーではありません。パワーを付けることはできないので、必要な部品や潤滑剤を適宜利用してシステムを正常運用することが大切であり、免疫維持には栄養摂取・排泄、適度な運動と睡眠が大切だと言われるのです。その上で、病原体に感染する前にその病原体の情報を取り込んで、身体に侵入してきた時にはいち早く排除できるよう、対応能を獲得して感染や重篤化のリスクを低減するのがワクチン接種の働きです。そう、ワクチンは病原体が身体に入ることを阻止したり、感染する事を抑制するものでは無く、あくまでも私たち自身の感染症防御システムを強化する1つの手段でしかありません。結果として感染や重症化のリスクを低減しているだけなのです。また、その効果はワクチンの性質によって長期間続くものもあれば、すぐに消えてしまうものもあり、人によっては効果を獲得できない場合もあります。 

 そんなワクチンは、どうして国家予算で接種する場合があるのでしょうか。定期接種と呼ばれるワクチンは、国が費用を負担して国民に接種することで、社会への蔓延を抑制して社会機能が麻痺するリスクを低減するために行われています。一方で、個人の感染リスクを低減する目的では、個々に費用を負担することで一部の感染症に対する任意ワクチンが認可されています。

 ワクチンは、例えると本を読むようなものだと、著者は考えています。知識を得ようと本を読みますが、文字を目で追うだけでは習得できませんし、読んでも全てを暗記するわけではなく少しずつ忘れます。義務教育では教科書を使って一定水準の教育が成されますが、同じ教科書を使っていても、学びの効果が個々に違うところも、ワクチンの効果や副反応に個人差があるのと似ています。もっとも、読書ではワクチン同様の身体的な副反応が出ることはなく、せいぜい期待外れだったり、嫌な気持ちになることくらいでしょう。

 本を娯楽の一つとして育った世代の私にとって、若者の読書離れは何よりも不安に感じます。世代の異なる人々で形成する社会には、本を介した知識も、ワクチンを介した免疫強化も大切だと感じています。

(内藤博敬)