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家庭科の教科書の中のリスク

日常生活のリスクといえば、事故、病気、失業、盗難、火災、地震などを思い浮かべるでしょうか。これらの望ましくない事態や要因に備えることは大切で、対処方法を学んでおきたいものです。日本の学校では、これらは家庭科で扱われており、現在の高校生は家庭基礎か家庭総合のどちらかの授業で学ぶ機会があります。

では高等学校の家庭科で、リスクという語はどのように使われているでしょうか。現行の教科書16冊を調べたところ、リスクという語は一冊あたり平均約30回記載されていました。記載数を分野別に集計すると、社会保障関連での記載が一番多く、次に健康関連、そして貯蓄関連、消費者問題関連、食品衛生関連と続きます。

その中で使われるリスクの意味に着目しましょう。リスクマネジメントの国際規格ISO31000によると、リスクという語は一般に、リスク源、起こりうる事象、起こった事象による結果、結果の起こりやすさや可能性も意味するとあります。そこで教科書に記載された文中のリスクの意味を読み解くと、健康関連では病気のリスク、ケガのリスクというように可能性や確率といった確率論的な意味で用いられることが多いようでした。一方で、社会保障関連では色々な意味が入り交じって使われています。文例を一つ挙げてみましょう。

「どこにいても,何をしていてもリスクはあり,問題の種類も質もさまざまである。かぜをひく,遅刻するといった日常の小さなリスクから,病気になる,大けがを負う,失業するなど,大きなリスクもある。未来に起こりうるリスクに対処したり,問題に遭遇したときに被害を最小限に抑える準備を,リスクマネジメントという。リスクマネジメントのためには,どのようなリスクがあるか,リスクの影響や確率はどのくらいかを知っておこう。」(教育図書・家庭基礎703)

ここに記載されたリスクの意味は、要因、事象、結果、可能性など色々な解釈ができます。重要な最後の一文のリスクは要因を指していると思いますので、「リスクの影響や確率」は、「要因の影響や確率」と書き換えられます。一方で、上述のように影響(結果)や起こりやすさ(確率)もリスクですから、「要因のリスクや確率」や「要因の影響やリスク」のように置き換えても何となく伝わります。

さらに欲張って全部を置き換えると、「リスクのリスクやリスクはどのくらいかを知っておこう。」となりますが、もはや意味不明です。リスクは便利な語ですが、安易に使うと意味が不明瞭になります。リスクは確率論的に考えると役に立つのですが、教科書ではあまり意識されていないようでした。せめて学校においては、リスクという語の意味をしっかり意識して使ってほしいと思います。

(金澤伸浩)