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食べ物による子どもの窒息事故を防ぐために

 子どもが食べ物で窒息する事故がなくなりません。昨年の4月と5月にはリンゴで2人の乳児が、今年2月にはうずらの卵で小学1年生が亡くなるという悲しい事故が発生しました。厚生労働省のデータによると、食べ物で窒息して亡くなった5歳未満の子どもは、2018年からの5年間で43人もいます 1)。このような事故を防ぐことはできないのでしょうか。

 食べ物による窒息のリスクをゼロにすることはできません。なぜなら、私たちの身体は、生きるために必要な空気と食べ物を、同じ喉を通って取り入れる構造になっているからです。小さな子どもや高齢者は、食べ物を噛む力や飲み込む力が弱く、窒息の危険が高まります。そのため注意が必要です。

 しかし、子どもの食べ物による窒息の危険性についてあまり注意を払っていない親もいます。2014年の調査によると2)、幼児の母親のうち7人に1人が、子どもの食事やおやつの際に、窒息に気を配っていない、と回答しています。気になる結果として、食べ物による窒息よりも、食品添加物や放射性物質のリスクを高く感じる人もいました。また、2017年の消費者庁の調査では、13歳の子どもの親で、「食べ物は食べやすい大きさにしてから与えたり、あめや硬い豆など喉につまりやすい小さな食べ物は与えない」という対策を「行っている」と回答した割合は、6割弱に留まっています3)

 人が感じるリスクの大きさは、発生する確率から見積られる客観的なリスクと異なり、個人の主観によって変わります。これは、認知のバイアスによるものです。人は、自分でコントロールできる事象や、自発的な関わりがある場合には、リスクを低く見積もる傾向があります。例えば、飲酒のリスクは低く見積られ、食品添加物や放射性物質のリスクは過大に見積られることが知られています。食べることは、日常的な行為であり、自分でコントロールできるため、窒息の危険性を意識しにくいのかもしれません。

  一方で、食べ物による窒息の事故が報道されると、食べ物を与えることがこわくなる人もいるでしょう。事故の印象が強すぎて、リスクを過大に評価してしまうのです。食べることは、人間がはるか昔から行ってきた毎日の行為であり、そのほとんどで事故は発生していません。ヒトには、食べるために適した身体の構造と仕組みが備わっているからです。ただ、小さな子どもや高齢者では、喉に詰まりやすいので注意が必要なのです。

 子どもの食べ物による窒息のリスクを低減するためには、発達に合わせた大きさや形状の食べ物を与えること、機嫌が悪い時や眠い時には食べ物を与えないことなど、いくつかのポイントを押える必要があります4),5)。例えば、丸く、つるっとしているミニトマトや大粒のぶどうなどは、4歳までは、4分の1にカットして与えると事故を防ぐことができます5)。さらに重要なことは、子どもが自分で安全な食べ方ができるように育てることです。行儀の良い食べ方は安全な食べ方ともいえます。子どもが、食べる時には集中して、よく噛んで食べる習慣を身につけると、悲惨な事故の発生を減らすことができます。成人期や高齢期の窒息事故を防ぐことにもつながります。

 食べることは生きること、すべての子どもたちの食べる営みが、つつがなく日々繰り返されることを心から願います。

 (田中惠子)

 

1)厚生労働省「人口動態統計」.不慮の事故による死因におけるW79_気道閉塞を生じた食物の誤えん」による死亡者数.                   

2)田中惠子、坂本裕子、他.幼児を持つ母親の食のリスクの考え方、知識、意識および行動.日本公衆衛生雑誌 64(9),567-576,2017

3)消費者庁.平成29年度子どもの事故防止調査結果概要.2018p26. https://www.caa.go.jp/future/project/project_006/pdf/project_006_180523_0001.pdf

4)消費者庁.食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!2021https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_047/assets/caution_047_210120_0001.pdf

5)日本小児科学会.食品による窒息 子どもを守るためにできること.https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20201030chissoku.pdf