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PCR検査の話②

今日は令和4114日(執筆時点)。新型コロナウイルスはオミクロン株により急激に感染が拡大しているようです。このため東京都ではPCR検査を無料で行う(対象:12歳未満の子、あるいは健康上の理由でワクチン接種を2回出来ない方等)ようになってきました。また政府は「・・・感染が拡大している地域においては、高齢者施設等の有症状の入所者・従業者に対し、幅広い検査を実施する。多数の感染者やクラスターが発生している地域においては、感染者が一人も発生していない施設等であっても、医療機関、高齢者施設等の従事者、入院・入所者全員に対して一斉検査を行う」(令和417日厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針変更」)としています。

検査体制が整備されることは素晴らしいことですが、一方で前回コラム(「PCR検査の話①」)でみたように検査自体の制約もあるので注意が必要です。すなわち陽性的中率の問題です。感染率が低い集団では陽性的中率が低く、擬陽性となってしまう人が増える結果をもたらすようです。このため東京都や政府方針でも先に見たように一定の条件において検査を拡充しています。

そこで感染率が高いとか低いとかというのはどういうことかが問題になると思われます。私事ですが、私の母はコロナ問題浮上以降、外出を控え買い物は宅配が中心となりました。近所の人たちとの会合も控えています。母の住んでいる地域は高齢者が多く、重症化リスクが高いという認識により皆さん同様の生活をしているようです。こういう人たちの感染率は低そうです。これに対して飛沫を浴びせあうような会話をせざるを得ない職業の人や、そのような機会の多い人は感染率が高そうです。以上の個々の行動の話と別に、感染が拡大している地域の特定の場所も感染率が高いと考えられます(上述の政府方針)。

そこで感染率を設定して検査の陽性的中率がどのように変化するかを見てみましょう(計算方法は前回コラム)。例えば感染率0.1%と1%、5%の集団を対象に検査した場合(感度80%、特異度99.9%)、感染率0.1%の集団では陽性的中率44.47%。感染率1%の集団では80.08%、5%の集団では97.68%です((感染率0.1%から30%までの陽性的中率の変化をグラフにして最後尾に示します)。

検査で陽性になったといっても自分の状況(感染リスクの高低)で実際の感染は相当異なるようです。日本では英国と比較して「陽性=感染」と考える傾向が強いという結果が、令和3610日日本経済新聞経済教室「認知のバイアス、政策に生かせ コロナに経済学の知見」(依田高典 京都大学教授)で取り上げられました。興味のある方はご覧下さい。                                                                                                                  (小山 浩一)

図表:陽性的中率の変化(感染率に応じた)

図表:陽性的中率の変化(感染率に応じた)