今回は中国を取り上げます。新NISAがスタートし、投資信託等を通じた株式市場への資金流入が続いています。しかし中国を対象とした投資信託等はあまり話題に上っていないように感じます。とはいえ実際には全世界株式インデックスや新興国インデックスなどの投資信託は人気を集めているので、中国の株式に対する投資が行われている実情はあります。
まず中国の名目GDPと株式時価総額の推移を以下に示します。
図表1中国名目GDPと株式時価総額推移 (図表1およびこの後出てくる図表2とも名目GDPはIMF,株式時価総額は世銀から筆者集計により作成)
名目GDP(図表の青線)は大きく伸びていることがわかります。
1990年から10年単位で年平均成長率をみると名目GDPは
90~00年 10.64% 00~10年 16.85% 10~20年 10.23% となっています。
名目GDPは大きく伸びていますが、通常ニュース等で話題になるのは実質値なので、名目のほうが当然数字は大きくなっています。
一方、株式時価総額は全体として名目GDPを下回る位置で推移しています。しかしその伸び率は大きな値になっています。
株式時価総額について10年単位で同様に年平均成長率をみると、データがとれた2003年からですが
03~10年 29.38% 10~20年 11.82%
となっています。
中国の株式時価総額は2008年ころから急拡大しています。トレンドとしては右肩上がりですが、2018年、2022年に大きく下落しています。
傾向としては右肩上がりの大きな成長がみられますが、時に大きな下落がみられます。これらは地政学的要因によるものと考えられ、
その影響の大きさが特徴といえそうです(18年貿易摩擦、22年新型コロナウイルスへの政策対応、ウクライナ問題への政策対応など)。
中国株式市場全体を指標とした投資についてはこれらの特徴を考慮しておく必要があるといえそうです。
名目GDPと株式時価総額の関係
中国の場合、名目GDPの成長と株式時価総額の増大は、株式時価総額が下方に位置する形で両者が成長しています。
乖離の状況を下表に示します。
図表2 株式時価総額/名目GDP
単位:百万ドル | 1990 | 1995 | 2000 | 2005 | 2010 | 2015 | 2020 | 2021 | 2022 |
名目GDP | 3965億90 | 7309億96 | 1兆2055億32 | 2兆2900億19 | 6兆338億30 | 11兆1135億8 | 14兆8625億64 | 17兆7593億7 |
17兆8863億31 |
株式時価総額 |
ー |
ー | ー | 4018億52 | 4兆278億40 | 8兆1880億19 | 12兆2144億65 | 14兆3745億20 |
11兆4253億43 |
株式時価総額/名目GDP | ー | ー | ー | 0.18 | 0.67 | 0.74 | 0.82 | 0.81 | 0.64 |
中国の場合、90年~2022年まで概ね「名目GDP>株式時価総額」という位置関係でその比率(株式時価総額/名目GDP)は2005年0.18でした。
2005年段階では株式時価総額は名目GDPの0.18倍、だいたい18%程度という状況です。
そこから5年単位でみると(上表の通り)2010年0.67、0.82、0.81、22年に0.64倍となっています。
大きな流れでみても株式時価総額は名目GDPを下回る位置で成長推移している状況です。
その成長推移において時に地政学的要因により大きくブレる(下落)傾向を持ってると考えられます。
前回の米国と比べてみると、米国は「株式時価総額>名目GDP」、
これに対して中国は「名目GDP>株式時価総額」の位置関係でした。
さて他ではどうでしょうか? 次回はドイツを見ることとします。
(小山浩一)