今回はイギリスを取り上げます。
まずイギリスの名目GDPと株式時価総額の推移を確認しましょう。図表1にイギリスの名目GDPと株式時価総額推移を示します。
図表1イギリス名目GDPと株式時価総額推移 (図表1およびこの後出てくる図表2とも名目GDPはIMF,株式時価総額は世銀から筆者集計により作成)
イギリスの名目GDP(ドルベース、図表の青線)は1990年から2007年まで上昇、その後下落から横ばいになり、その段階からは比較的小さい上下動を繰り返しているように見えます。
1990年から10年単位で年平均成長率をみると名目GDPは
90~00年 3.06% 00~10年 3.60% 10~20年 1.0% となっています。
次に株式時価総額ですが、全体として名目GDPを上回る位置で推移(図表の茶色線)していることがわかります。
株式時価総額について10年単位で同様に年平均成長率をみると、
90~00年10.61% 00~10年–0.86% 10~20年3.41%
となっています。
イギリスの株式時価総額は2007年まで大きな上下動を伴いながら上昇し、翌2008年に大きく下落。そこから2017年まで上昇基調となっています。その後上下動を経て2019年から2022年までは下落基調をたどっています。
名目GDPと株式時価総額の関係
イギリスの場合、名目GDPの成長と株式時価総額の増大は、株式時価総額が上方に位置する形で推移、名目GDPは2008年以降、微増、株式時価総額はこれを上回る増大を示しています。両者の乖離の状況を下表に示します。
図表2 株式時価総額/名目GDP
単位:百万ドル |
1990 |
1995 |
2000 |
2005 |
2010 |
2015 |
2020 |
2021 |
2022 |
名目GDP |
1兆1981億66百万ドル |
1兆3464億49百万ドル |
1兆6692億83百万ドル |
2兆5476億65百万ドル |
2兆4938億44百万ドル |
2兆9355億06百万ドル |
2兆7065億42百万ドル |
3兆1232億31百万ドル |
3兆0818億71百万ドル |
株式時価総額 |
8498億48百万ドル ― |
1兆3299億36百万ドル ― |
2兆5769億91百万ドル |
3兆0581億82百万ドル |
2兆6868億81百万ドル |
3兆8787億74百万ドル |
4兆0455億97百万ドル |
3兆7994億59百万ドル |
3兆0959億83百万ドル |
株式時価総額/名目GDP |
0.71 |
0.99 |
1.54 |
1.20 |
1.08 |
1.32 |
1.49 |
1.22 |
1.005 |
イギリスでは1995年以降、概ね「名目GDP<株式時価総額」という関係で、例外は2008年です。これはリーマンショックの急落と考えられます。比率(株式時価総額/名目GDP)をみると90年0.71でしたが、95年0.99、2000年1.54と高まります。2000年段階では株式時価総額は名目GDPの154%程度でした。そこから5年単位でみると(上表の通り)05年1.20、10年1.08、15年1.32、20年1.49です。そこから下落しても22年に1.005と1倍以上を維持している状況です。
株式時価総額は長期で上昇していますが、時に大きな急落があります。しかし名目GDPとの対比では概ね1以上の水準となっています。
名目GDPより株式時価総額が大きい状態を維持している国はそれほど多くないので、これはイギリスの特徴と考えられます。
次回はフランスを取り上げます。国別状況はフランスでいったん終了し、これまで見た国の比較を次々回に行う予定です。
(小山 浩一)